楽しく食べ物のことが学べる食育小説
肉が大好物な幼稚園児ミート君、ミート君を心から愛するやさしいお母さん、そして2人の強い味方フード博士
食べ物についてフード博士と勉強しながらミート君は成長していきます。
食べ物に関わるいろいろな知識を楽しく学べる「食育小説」です。
どうぞお子さんとお楽しみください。ペンネーム 愛山鉄朗
登場人物
- 主人公
お肉が大好きな男の子
ミート君のことを心から大切に思う優しいお母さん
食べ物について何でも知っている2人の強い味方 フード博士
第3話 いただきます!
ある朝のことです。ミート君のお母さんが朝ごはんの準備をしています。ミート君はまだベッドの中のようです。
ミート君!もう朝よ、起きなさい。幼稚園に遅れるわよ!
う~ん。まだ眠いよ!グ~~~
しょうがないわね~。夜遅くまでゲームしてるからよ!
グ~~~
もうっ!ミート!朝ごはん、お母さんが食べちゃうからね!
それはあんまりだよ、お母さん。
ミート君はいきなり飛び起きて叫びました。
起きられるならすぐに起きなさい!本当に『ごはん』とか『おやつ』という言葉に敏感に反応するんだから。
ミート君は着替えをして、顔を洗って、食卓へやってきました。テーブルにはもうお母さんが作ってくれた朝ごはんが用意されています。メニューは、ごはん・みそ汁・納豆・漬け物です。
ミート君はテーブルにつくと、何も言わずいきなり朝ごはんを食べ始めました。
ミート君!ごはんの前のごあいさつは?
ん?あぁ、あれね!いただきま~~す!
しっかり心をこめて言いなさい!ありがとう!って
どうしてごはんに『ありがとう』っていうの?ごはんには耳がないから、
言っても聞こえないのに・・・。
そういうことじゃなくて、ごはんが食べられることに『ありがとう』っ
ていうのよ。
ごはんを食べるのは当たり前でしょ?だってお米やお味噌やお野菜を買っ
てくればいいんだもん。
でも、お米やお野菜が買えなくなるかもしれないでしょ?
うちにはお金がないの?
そういうことじゃなくて、お米やお野菜を作ってくれているお百姓さんがいなかったら、ごはんが食べられないでしょ?
大丈夫だよ。お百姓さんは元気だから、病気にはならないから!
・・・・・・
お母さんは電話に手をのばしました。
フード博士?こんにちは。実はこれこれしかじか・・・というわけで、今晩伺ってもよろしいでしょうか?
夕方、幼稚園から帰ったミート君とおかあさんはフード博士を訪ねました。
こんばんは。フード博士、いつも本当にすみません。
いえいえ、『食育』というのは「食べる」ことだけではなくて、マナーや手洗いやうがいなどの「習慣」も大事なことですからね。
本当にそう思います。母親としてきちんと説明しなくてはいけないのですが、なかなかうまく伝わらなくて。
親だけでなく、学校や地域社会が連携していくことも『食育』のうえでとても重要ですから、私でできることがあれば喜んで協力しますよ!
ありがとうございます。
こんばんは、博士。いつもおかあさんがお世話になってま~す!
なに偉そうなこと言っているのよ!
ははっ。食べ物が変わったせいで口が達者になってきたね。
博士と日本食のおかげだよ。
それは良かった。ありがとう。さてミート君、今朝の『いただきます』の話なんだけど・・・・。
“ありがとう”のことだね。あれからちょっと考えたんだけど、ごはんを食べるとおいしいし、おなかもふくれて嬉しいから“ありがとう”というのは分かるけど、どうして『いただきます』って言うのかな~?
『いただきます』というのは『もらいます』という言葉が丁寧になった言葉なんだよ。
へ~、じゃあ『もらいます』ということは、ごはんやおかずを『食べますよ~』と言っているんだね。
もちろんそういう意味も込められているけど、もっと大切な意味があるんだ。
どんな意味?
ミート君は生きているよね?
博士はいつも変なこと聞くんだね。当たり前でしょ!今博士とお話しているじゃない。
では、なぜ生きているんだい?
なぜって・・・
何かがミート君にあるからなんだよ。何だと思う?
今日の“クイズ”は難しいね!
では質問を変えよう。人間は何かをなくすと死んでしまうのだけど、何をなくすと死んでしまうのだろうか?ヒントは、「い」で始まる3文字の言葉だよ。
「い」で始める言葉・・・、あっ、そうか!わかったぞ。『いのち』だ!
大正解!よく分かったね、さすがミート君。そう『いのち』だね。大切な『いのち』をなくしてしまうと人間は死んでしまうんだ。とても悲しいことだけど。『いのち』はたった1つしかないから、なくしてしまうともう戻ってこない。だから大切に大切にしなければならないものなんだ。
そうだね。ずっと前、うちで“ラブ”っていう犬を飼っていたんだけど、病気で死んじゃって、すごく悲しくて、すごくかわいそうで僕泣いちゃった。
そう、『いのち』は人間だけがもっているものではないよね。犬や猫、牛や豚、魚や鳥などの動物にも、そして野菜や花や木などの植物にも、生きているものには全て『いのち』があるんだ。
うん。みんな大切な『いのち』を持っているから生きているんだね。
そうだよ。そんな動物や植物をミート君はごはんとして毎日食べて生きているわけだね。例えば、牛や豚は人間に食べられるために大切な『いのち』をけずってお肉になってくれているし、お米や野菜や果物も大切な『いのち』を私たちの食べ物になってくれているんだ。
かわいそうだね。人間が食べなければもっと生きていられたのに。
確かにかわいそうだけど、人間も生きていくためには何かを食べないといけないから仕方がないね。でも、ミート君が日本食を食べるようになったように、食べるものは自分で選ぶことができるけどね。
僕は今、たまにしかお肉を食べなくなったけど、僕たちのために大切な命をけずったお肉なんだね。
そう、ごはんで食べるお肉や野菜には、私たちのためにくれた『いのち』が入っているんだ。
そうか!僕はごはんで食べ物の大切な『いのち』をもらっているんだ。食べ物さん、ありがとう!だね。
ミート君、今なんて言った?
ん?『いのち』もらっているって。
それから?
食べ物さん、ありがとうって。
さっき博士が言った『もらいます』っていう言葉をていねいにした言葉は何だった?
えっと、あっ!『いただきます』だ!そうか、『いただきます』っていうのは、食べ物の大切な『いのち』をもらいますという意味だったんだね。だから、食べ物にありがとうなんだ。
よく気が付いたね。スゴイな。素晴らしいよ!ねえ、おかあさん?
おかあさんはわが子の変化にただただ感動して言葉もでません。
おかあさん、僕『いただきます』の意味がよくわかったよ。大切な『いのち』の入ったごはんをもう残したりしないからね。それから、食べ物にいつもありがとう!って言うね。
それからもうひとつ、とっても大切なことに気が付いたんだ!
なあに?
それはね、毎日ぼくのためにご飯を作ってくれるおかあさんにもありがとう!ってこと。
思わずお母さんはミート君をしっかり抱きしめました。お母さんの目からは大粒の涙があふれていました。
★食育小説「ミート君とフード博士」第1話はこちら
★食育小説「ミート君とフード博士」第2話はこちら
コメント